デザイナー INTERVIEW vol. 08

「日本の伝統的な物事を大事にしながら、今の時代に繋がるものを作りたいと思っています」
デザイナー 大山薫子

G.C.PRESSのプロダクト制作の要、インハウスのデザイナーへインタビュー。第8回の今回は、デザイナー・大山薫子さんに、G.C.PRESSデザイナーとしての歩みを振り返っていただきました。

絵を見るだけで、日本の良さがじわっと伝わるとうれしい

G.C.PRESSに入社し、約20年のキャリアを持つ大山さん(2017年現在)。社内では唯一、墨絵や木版の画法で描くデザイナーです。

「大学では、版画科でシルクスクリーンを専攻していました。当時は、厳しいテーマやコンセプトを設けた作品づくりを、窮屈に感じることもありました。そんな時、息が抜けて人をほっとさせるようなG.C.PRESSの便箋は、私の癒やしグッズだったんです。実は、入社する前から、何気なく弊社の製品を手に取っていました」

大学院に進み、さらに版画に打ち込むも、幼少期からおぼろげに夢みていた「文具を作りたい」という思いは消えなかったといいます。そんな想いで門を叩いたのがG.C.PRESSでした。

「入社してすぐに手がけた“ぼうず”シリーズは、思い出の製品です。このシリーズでは、“いが栗ぼうず”や“しぶ柿ぼうず”など、墨絵で描いた旬の食べ物たちが、思いおもいにその季節を楽しむ…という世界を描いています。テーマの根底には、お手紙を書かれる方と受け取られる方が、イラストの続きや会話を想像して楽しんでいただけるよう、やりすぎず、柔らかいシュチュエーションになるよう心がけています。江戸時代の浮世絵や、日本画など、当時の絵師達の描くユーモラスさに憧れますね」と大山さん。

▲「描き始めると物語がどんどん浮かぶので、どれを採用するかいつも迷います」と語る、大山さん

「ぼうず」シリーズは、これまでに25種類ほど制作しており、ファンが新シリーズを待ちわびるほどの人気商品へと成長しました。また、大山さんのおはこといえば墨絵と木版画ですが、木版画へ本格的に取り組んだのは入社以降だといいます。その木版の良さが絶妙にいかされた作品が「町猫のススメ」です。

▲左手前が原画。今にも黒猫が鈴を鳴らし、こちらに駆け寄ってきそうだ

「これは、15年以上前に初めて手がけたシリーズです。最近リニューアルをしたので、当時のものとは雰囲気が少し違うと思いますが、商店街に住んでいる猫を主役に、懐かしさやどこか心がくすぐられる感じを出したいと思いながら描きました」

「昔から変わらずに継承されている木版の技法の良さをいかしながら、日本独特の遊びや風習などを、今の時代に合わせて製品上で表現したいと思っています。使っていただいている方に、言葉にしなくても絵を見るだけで、日本の良さがじわっと伝わるとうれしいですね」

▲大山さんが愛用している道具たち。中には、大学時代から使い続けている彫刻刀も

子育ての経験で、仕事と向き合う感覚にも変化が

他にも、大山さんを語る上で欠かせないのが、「うさぎえくぼ」や「きょうもごろごろ」、「またねてあそぶ」など、墨絵で動物を描いた製品の数々です。

「入社から5年目で出産し、8カ月の産前産後・育児休暇を経て復帰しました。今まで、時には子連れで出社することもありましたが、社長とシニアデザイナーの真柄(まがら)の愛犬がオフィスにいたおかげで、息子はいつも楽しそうでした。わたし自身、幼い頃から猫が身近にいたので、イラストのモチーフは猫ばかりでしたが、あの経験で犬も猫もどちらも描くようになりましたね。その息子は、もう、中学3年生です」

▲子犬がかわいらしくお辞儀をする「いぬうらら」など、墨絵で描いた動物がモチーフの金封や年賀状も大山さんの十八番だ

子育ての経験は、イラストモチーフの幅を広げただけでなく、仕事への姿勢にも変化をもたらしたといいます。

「子どもができてからは、生活スタイルががらりと変わりました。仕事と向き合う感覚も、環境と密着したものに変化したように思います。子育てを通して親戚との付き合いも深くなり、子どもを通してたくさんのお母さん友達ができたりと、人と交流する機会が増えました。同時に、子どものお祝いや年中行事、歳時記に触れる機会も増えたので、儀礼の中でのコミュニケーションの場面をよりリアルに想像しながら、製品が作れるようになりました」

「例えば、おばあちゃんから孫へおこづかいをあげる時は? 孫からおじいちゃんやおばあちゃんへの手紙を送る時は? 幼稚園や学校のお友達にお礼の一言を添える時はどういうアイテムがふさわしいだろう?といったように…」

子育てを通して日本の年中行事へ関わった経験が、大山さんのデザインの新しい風になったようです。

“丁寧な仕事”を心がけ、大事に作品を作り続けたい

伝統的な技法を大事にしながら、日本の古典的なかたちや遊び、風習を描き続ける大山さん。子育てで得た経験の他に、幼少期から持っている特別な思いもありました。

「子どもの時からずっと、『自然の恵みに人は守られている』という感覚を持ち続けてきました。だから、旬の食べ物や猫や犬などの生き物に意思や生命力を見いだし、私の頭の中では、彼らが楽しく動き出してしまうんです。収穫や自然の恵み、過ぎ行く季節への感謝を表現したいという気持ちが、『ぼうずシリーズ』や『町猫のススメ』、『きょうもごろごろ』などの原点になっていると思います」

「また、子育てを介して増えた交流の中で一筆を添える機会が増えて、生活も忙しくなりました。そんな忙しい毎日でも、便箋や一筆箋にふと力がぬけるような季節が感じられる絵柄があったら、うれしいなと思うんです。手紙を書く方も受け取られる方も、優しい気持ちになれて、使う方それぞれの楽しさが広がるような、そんな絵柄を描いていきたいですね」

自身が大学時代にG.C.PRESSの便箋に癒やされたように、「使う人がほっとするような、製品を作ることが理想」と大山さんは話します。

「『そこに、便箋があったから、手紙でも書こうかな』と思ってもらえればうれしい。わたしはデザイナーとして、気持ちの上でもひとつひとつの作業においても、“丁寧な仕事”を心がけて、これからも大事にだいじに作品を作り続けたいと思っています」

▲現在は廃盤となっているが、活版印刷を使用した「パンダのでんぐりがえし」や「ヒマ猫の暇つぶし」も、大山さんの思い出の作品

日本の年中行事を意識し自然の恵みへの畏敬が込められた、大山さんの作品たち。どの製品にもほっこりとしたかわいらしさが感じられるのは、大山さんのチャーミングな人柄故だと感じました。古来の良さと現代らしさが見事に調和された大山さんの次回作が、楽しみでなりません。

デザイナー 大山薫子(おおやまかおるこ)
女子美術大学版画専攻卒業後、東京芸術大学大学院修士課程版画科卒業。1997年にG.C.PRESSに入社。代表プロダクトは「ぼうず」「墨絵」シリーズほか多数。

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